続・大岡山書店の販促パンフレット『日本経済史研究批評集』

以前、「折口信夫『古代研究』の販促パンフレット⁉︎『古代研究批評集』という小冊子」という記事で、折口信夫の『古代研究』全3巻の完結を祝し、版元の大岡山書店が書評や読者カードに書かれた感想をまとめた小冊子を紹介した。

huruhongunma.hatenablog.com

今回は幸田成友の『日本経済史研究』の再刊を記念して作成された『日本経済史研究批評集』が手に入ったので紹介する。



日本の古本屋の頭突書店にて1.100円で購入。内容は三三田村鳶魚など4名の書評と大岡山書店の広告などで、17頁の小冊子だ。

作成の経緯としては、幸田成友の『日本経済史研究』が刊行後2カ月で再刊されたことを記念してとの事。『日本経済史研究』は1928年11月に出版されたので、その2か月後の1929年1月頃に作成された冊子と考えられる。



前述の『古代研究批評集』は1930年6月以降に作成されたものと考えられるので、それより2年早く同じような小冊子が作成されていたことになる。ただ表紙の組み方がかなり似ているので、この2冊だけではなく、刊行された書籍の批評集は継続的に作成されてそうな気がする。日本の古本屋の在庫検索では、私が買った2冊しか出品された形跡はないけど。今後も頭の片隅に置いて古本ライフを送ろうっと。中山太郎のものがあったらぜひとも見てみたいものよ。

 

あと記事を書くにあたって『古代研究批評集』を読み直したけど、読書カードの「著者先生へ」が面白かった。「製本堅牢でよし」とある次に「製本が悪い。よくせよ。背がぐにやぐにやする。ひどい」とあったり、「定価が高い」とあるのにそのまたすぐ次に「定価が安くていい」とか。わざわざ隣同士に真反対の意見を並べていて、もう最高。めっさ笑った。

森口武男『折口信夫の河童』目次

 

書誌情報
著者:森口武男
編集者:西村博美
発行所:地虫詩社
発行日:2000年7月26日

森口武男
1912年生まれ。
国文学者で折口の弟子の水木直箭(『随筆折口信夫』著者)の義弟。
後に大和迢空会の設立メンバーとなる。
奈良高校教諭
まほろば』編集幹事(奈良県高等学校国語分科会)
詩誌『地中』同人

以下目次
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折口先生のこと 6
 顔合わせ 6
 車中 8
 『鳥舟』 その一 10
 ムシ 11
 質問 14
 『鳥船』 その二 15
 カッパ祭り 17
 下宿屋 20
 どなりこみ 21
 色紙 24
 サツリク 27
 石山にて 30
 首 31
 行列 32
 琉球問答 34
 最後の批評 36
 ねずみのトンボ返り 39
 常世で 45
 つまらん弟子46
 堀内さんのこと 48
 沖縄の形 50
折口信夫の河童 54
折口先生のあたり 66
奈良の折口門下三人の話 94
 水木直箭 94
 笹谷良造 103
 堀内民一 107

**
思い出 ―幼年・少年―  114
寮の青春 164
小さな文学年表 220
幼稚な美術年表 248
やるせない音楽年表 272
可愛い天文年表 332

***
花より団子 362
夢物語 ―古代人の夢― 376
音読黙読時代 386

****
蚯蚓 390

あとがき

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「折口先生のこと」は『まほろば』15号の折口信夫先生特集にて発表のもの。
しっかりと読んでいないが、いろいろと発見がありそうでその内しっかりと読みたい。

以上、紹介でした。

折口信夫『古代研究』の販促パンフレット⁉︎『古代研究批評集』という小冊子

NHKの100分de名著という番組で、10月の題材に折口信夫の『古代研究』が取り上げられた。講師は上野誠先生。上野先生の著書『折口信夫 魂の古代学』は、高校2年生だった当時の私を國學院大學へと導いた本で、大学2年の頃まで関係書籍を色々読み耽った。折口自体への興味は大学2年の頃には大分薄れたが、関係書籍は新刊本・古本問わず惰性で買い続けている。
 そんな中で『古代研究』が取り上げられると聞いて、最近は仕事の忙しさであまり覗けていなかった日本の古本屋で折口関係を見ていると、気になった資料が一点。それが今回の『古代研究批評集』だ。

 

 

 

石神井書店から2,200円で購入した。内容としては、4つの書評と大岡山書店の図書目録などで、32頁の小冊子だ。
 巻頭の例言を見てみる。

 


 

 折口先生の名著「古代研究」(民俗學篇第一冊、國文學篇、各三版)三冊中、今回、民俗學篇第二冊を刊行するを得て、今回、本書の刊行を完了するを得ました事は、折口先生の御援助は云ふまでもなく、御買上げ賜りました方々の御助力に據る所と、私ども大岡山書店員、深く銘記して、永く忘れない所であります。

 これを機会に、小店は、古代研究批評集を作って、大方の御覧に入れたく存じます。

とある。要するに『古代研究』の最終巻に当たる民俗學篇の第二冊の刊行を祝って作られた書評集と捉えることができる。そこから考えると、この小冊子は1930年の6月以降に作成されたものであろう。

 

 続いて内容をみてみる...といっても転載された書評に興味はなく、16頁に「書店員より」と題された文章に興味をひかれた。

 古代研究には、はじめての試みとして、読者カードを入れて、大方の御氏名、御希望、御意見を承ることに致しました。

とある。そう、読者カードで大岡山書店に寄せられた内容が載っているのだ。折口の受容史に興味がある私からするととても面白い。

写真を添付したのでいろいろ読んで下され。当時の折口への見方、また大岡山書店がどのように学者たちに見られていたのかがわかる良い資料だ。

四年間で借りたものの一部(全部読んだとは言っていない)

大學図書館で四年間の間に借りたものの一部

あくまで一部。また、全部きちんと読んでるわけじゃあないです

 

「二〇世紀民俗学」を乗り越える : 私たちは福田アジオとの討論から何を学ぶか? / 福田アジオ, 菅豊, 塚原伸治著. -- 岩田書院, 2012.
神話の生成と折口学の射程 / 保坂達雄著. -- 岩田書院, 2014.
神と巫女の古代伝承論 / 保坂達雄著. -- 岩田書院, 2003.
折口信夫の生成 / 松本博明著. -- おうふう, 2015.
江戸の板本 : 書誌学談義 / 中野三敏著. -- 岩波書店, 1995.
風土記説話の表現世界 / 谷口雅博著. -- 笠間書院, 2018.
〈弱さ〉と〈抵抗〉の近代国学 : 戦時下の柳田國男保田與重郎折口信夫 / 石川公彌子著. -- 講談社, 2009. -- (講談社選書メチエ ; 449).
稀本あれこれ : 国立国会図書館の蔵書から / 国立国会図書館編著. -- 出版ニュース社, 1994.
三大編纂物, 群書類従, 古事類苑, 国書総目録の出版文化史 / 熊田淳美[著]. -- 勉誠出版, 2009.
日本古典書誌学論 / 佐々木孝浩著. -- 笠間書院, 2016.
日本近代書誌学細見 / 谷沢永一著. -- 和泉書院, 2003.
古活字版伝説 : 近世初頭の印刷と出版 / 渡辺守邦著. -- 青裳堂書店, 1987. -- (日本書誌学大系 ; 54).
昭和前期の神道と社会 / 國學院大學研究開発推進センター編 ; 阪本是丸責任編集. -- 弘文堂, 2016.
日本書紀』受容史研究 : 国学における方法 / 渡邉卓著. -- 笠間書院, 2012.
柳田国男民俗学構想 / 室井康成著. -- 森話社, 2010.
古代文献の受容史研究 / 青木周平著. -- おうふう, 2016. -- (青木周平著作集 / 青木周平著 ; 下巻).
日本文献史序説 / 和田万吉著. -- 青裳堂書店, 1983. -- (日本書誌学大系 ; 32).
国学論の展開 : 柳田・折口民俗学の行方 / 内野吾郎著. -- 創林社, 1983.
安居院作『神道集』の成立 / 福田晃著. -- 三弥井書店, 2017.
日本書紀の誕生 : 編纂と受容の歴史 / 遠藤慶太 [ほか] 編. -- 八木書店古書出版部, 2018.
書誌学的思考 / 谷沢永一著. -- 和泉書院, 1996. -- (日本近代文学研叢).
谷沢永一書誌学研叢 / 青山毅,浦西和彦編. -- 日外アソシエーツ, 1986.
汲古随想 / 田中敬著. -- 早川図書, 1979. -- (田中敬著作集 ; 第3巻).
紙つぶて : 自作自注最終版 / 谷沢永一著. -- 文藝春秋, 2005.
近世上野神話の世界 : 在地縁起と伝承者 / 佐藤喜久一郎著. -- 岩田書院, 2007.
中世の寺社縁起と参詣 / 徳田和夫編. -- 竹林舎, 2013. -- (中世文学と隣接諸学 ; 8).
当麻曼荼羅と中将姫 / 日沖敦子著. -- 勉誠出版, 2012.
検閲と発禁 : 近代日本の言論統制 / 水沢不二夫著. -- 森話社, 2016.
蔵書書目・書誌学史. -- 汲古書院, 1983. -- (長澤規矩也著作集 / 長澤規矩也先生喜壽記念會編 ; 第4巻).
方法論論争 / 谷沢永一著. -- 和泉書院, 1995. -- (日本近代文学研叢).
遊幸思想と神社神道 / 堀一郎著 ; 楠正弘編. -- 未来社, 1981. -- (堀一郎著作集 / 楠正弘編 ; 第4巻).
柳田国男の歴史社会学/ 佐藤健二著. -- せりか書房, 2015. -- (読書空間の近代 ; 続).
柳田國男の書物 : 書誌的事項を中心として / 田中正明著. -- 岩田書院, 2003.
日本民俗学方法序説 : 柳田国男民俗学 / 福田アジオ著. -- 弘文堂, 1984. -- (日本民俗学研究叢書).
フォークロリズムから見た今日の民俗文化 / 河野眞著. -- 創土社, 2012.
「変態」という文化 : 近代日本の〈小さな革命〉 / 竹内瑞穂著. -- ひつじ書房, 2014. -- (シリーズ文化研究 ; 3).
方法としての柳田国男 / 佐藤健二著. -- 弘文堂, 1987. -- (読書空間の近代).
南方熊楠のロンドン : 国際学術雑誌と近代科学の進歩 / 志村真幸著. -- 慶應義塾大学出版会, 2020.
エロ・グロ・ナンセンス / 島村輝編. -- ゆまに書房, 2005. -- (コレクション・モダン都市文化 / 和田博文監修 ; 15).
はじめて学ぶ文化人類学 : 人物・古典・名著からの誘い / 岸上伸啓編著. -- ミネルヴァ書房, 2018.
日本民族学の戦前と戦後 : 岡正雄日本民族学の草分け / ヨーゼフ・クライナー編. -- 東京堂出版, 2013.
記録考古学史楽石雑筆 / 大場磐雄著 ; 上. -- 雄山閣出版, 1975. -- (大場磐雄著作集 / 大場磐雄著 ; 第6巻).
歴史民俗学の構想. -- 吉川弘文館, 1989. -- (櫻井徳太郎著作集 / 櫻井徳太郎著 ; 第8巻).
中世天照大神信仰の研究 / 伊藤聡著. -- 法藏館, 2011.
南方熊楠と日本文学 / 伊藤慎吾著. -- 勉誠出版, 2020.
近代日本の人類学史 : 帝国と植民地の記憶 / 中生勝美著. -- 風響社, 2016.
近代の神道と社会 / 國學院大學研究開発推進センター編 ; 阪本是丸責任編集. -- 弘文堂, 2020.
国家神道形成過程の研究 / 阪本是丸著. -- 岩波書店, 1994.

 

こうしてみると、明らか民俗学徒じゃないですねw

架蔵の内務省印本について

はじめに 

 戦前の日本では内務省によって図書などの検閲が行われていた。今回、私が古本市や日本の古本屋で購入した内務省印本=内務省に納本された書籍について、参考程度に書き置いておく。また少ししたらきちんと調べます。

 

 なお、内務省印本に関する参考文献を簡単に以下にあげておく。

・小林昌樹国立国会図書館にない本 内務省納本雑誌との出会い」『国立国会図書館月報』673、2017.5

dl.ndl.go.jp

・「内務省委託本」調査レポート、千代田区立図書館

www.library.chiyoda.tokyo.jp

架蔵内務省印本の紹介

 初めて手に入れた内務省印本は、下の写真のものだ。

・黒本植『続花守集』(稼堂先生著書刊行会、昭和11年7月20日)

黒本植は漢学者で黒本稼堂ともいう。五校の教授などを勤め、夏目漱石と交流があったそうだ。稼堂はこの年の11月15日に79歳で亡くなったそうだ。

黒本稼堂とは - コトバンク

 この本は五反田の古本市の一階ガレージの外の箱に入っていた。あたしのツイートを見ると、2020年12月18日に買ったみたい。残念ながら値段の紙は取ってしまったので正確な値段は思い出せないが、数百円ほどで買ったことは確か。見つけたときはすごい嬉しかった記憶がある。

 

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 まず表紙を見てみると、題箋の右隣に内務省印が見える。「内務省/11・7・20/普通出版」という青丸印。さらに右下にはチェックマークがある。このチェックマークの意味はわからず。


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 一ページめくった見返しの下部には、斜めに押されたハンコがある。残念ながらあたしでは読み取れないが、この本を担当した検閲官のハンコなのか?(読める方募)


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 さて、内容を見ると、赤鉛筆でマークがついていた箇所がある。上の写真は一例だが、この三種類のマークが所々にあった。ここが検閲官が気になった箇所なのだろう。天皇や神社に関係しそうな箇所に多く見られ、不敬かどうかをみていたのかな。

 

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 また一か所だけ文字が書かれている箇所もあった。意味はよくわからんね。

 

 このように見ていくと、この『続花守集』は検閲に使われた正本であると考えていいだろう。非常な貴重な資料じゃなかろうか。

 

 次に紹介するのは

・『蕗原』三巻五号、昭和12年12月20日、蕗原民俗研究会

 蕗原民俗研究会は民俗学者の竹内利美が代表の研究会だ。

 これは日本の古本屋で、2000円で購入した。

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 表紙を見ると、左上に「納本」という字が、その右横に「内務省/12・12・20/出版雑誌」という青丸印がある。

 『続花守集』と違い、赤鉛筆によるマーク等はなく、検閲に使用されなかった副本であるかと思う。

 

 

 次に紹介するのは

・『遠江郷土研究會誌』第二號、遠江郷土研究會、昭和6年4月16日

 静岡県の研究會で、この号は120部印刷された。

 NDLオンラインには、12号がインターネット公開されている。

 日本の古本屋で2000円で購入した。

ndlonline.ndl.go.jp

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 表紙には、「内務省/6・〇・〇2/正本」と青丸印がある。残念ながら日付の部分はかすれていて読み取ることはできない。また、『蕗原』と同様、赤鉛筆によるマーク等は確認できなかった。

 この資料の最も特徴的な部分として、青丸印の「正本」とある部分であろう。前掲の小林氏の図を参考にすると、正本は検閲に使用され、東京の各図書館に委託された。いわゆる内務省委託本であり、本来はどこかの図書館に委託されると考えられるが、

ただ、委託本も交付本も図書のたぐいがほとんどで、大量にあったはずの新聞、雑誌の納本現品が正本、副本ともどこへ行ってしまったのかはほとんど問われないままであった。 小林昌樹国立国会図書館にない本 内務省納本雑誌との出会い」『国立国会図書館月報』673、2017.5

とあり、雑誌であるこの資料は図書のように図書館に委託されず、どこからともなく流れ出たものではないか思う。

 

まとめ

 ということで、架蔵の内務省印本の紹介を行った。『続花守集』については検閲の跡がみられる資料であり、大変貴重なものではないかと思う。

 また、『蕗原』と『遠江郷土研究會誌』は、各図書館に収蔵されず、捨てられた可能性が高い雑誌の生き残りとして貴重なものといえる。

 これはまったくの妄想だが、小林氏の論文には、主題が民俗に偏っていることから同一人物が所有していたものではないかとあるが、これらの雑誌も民俗関係の雑誌であり、あたしはネットで購入、小林氏は古本市で購入という違いがあるが、もしかしたら同じ人が持っていたかもしれないね(重ねてまったくの妄想ですがね)。

 いずれにせよ、内務省印本なんて一般市民の世界にはなかなか現れないものだから、買えてよかった。

続:地平社書房の古書目録について

huruhongunma.hatenablog.com

はじめに

 以前、『民俗藝術』の初期の版元である地平社社房の目録について、架蔵4点を紹介した。改めて、その書誌を説明すると、

・『地平社書房古書販売目録』第一號、昭和3年1月15日発行

・『地平社書房古書販売目録』第二號、昭和3年4月15日発行

・『地平社書房古書販売目録』第三號、昭和3年8月20日発行

・『地平社書房古書販売目録』第四號、奥付なし

となる。

 今回は、近代書誌懇話会編の『日本古書目録大年表』(以下「年表」)を参考にして、前記事について補足を行う。

 

書誌: 近代書誌懇話会編『日本古書目録大年表』(金沢文圃閣、2015.1)

なお、これは大學図書館に購入申請を出して入れてもらった。未来の院友たちは有効に利用されたし。

 

目録からみる地平社書房の古書目録

 年表には、地平社書房の古書目録は5点掲載されている。このうち、3点は前記事にて紹介した、1、3,4号である。一番ページ数の多かった2号は千代田図書館のコレクションには入っていないようだ。

 さて、ほかの2点について説明する。いずれも、前記の目録の前年(昭和2年、1928)に発行されたようだ。

・『地平社書房古書販売月報』1号、昭和2年9月

・『地平社書房古書販売月報』2号、昭和2年10月

以上2点があったようだ。

 ここで、『地平社書房古書販売目録』第一號の巻末を見てみると、「月報」から「目録」に変わった事情がわかるようになった。

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実は本目録の原稿は去る十一月中に出来ていたのでございますが、製版所にある事故が生じましたため、こんなに遅れるやうになつたのでございます。

 つまり、もともと昭和3年1月の「目録」1号は、前年の昭和2年、「月報」2号の翌月の11月に発行される予定であったということだ。しかし、製版所で事故ってしまい、発行が遅れ、その間に『民俗藝術』の発行等の業務が重なってしまい、毎月発行の月報として目録が発行できなくなってしまったということになる。

 以上が、『地平社書房古書販売月報』から『地平社書房古書販売目録』への名称変更の要因となったようだ。

 

まとめ

 年表から架蔵していない地平社書房の目録を調べると、前年に2冊発行していることがわかった。これにより、地平社書房の「古本屋」として動きが一部わかったんじゃなかろうかということです。

 素人目線でも、古本屋と出版社の兼業がいかに大変なのかがわかった。

 なにはともあれ、民俗学史に残る雑誌『民俗藝術』を創刊したことはすごいことです。

地平社書房の古書目録について

 折口信夫の「翁の発生」などの論文を掲載した『民俗藝術』。その初期の発行元である地平社書房は古書目録を発行していた。

 

 架蔵のものは4冊ある。

 

・『地平社書房古書販売目録』第一號、昭和3年1月15日発行

・『地平社書房古書販売目録』第二號、昭和3年4月15日発行

・『地平社書房古書販売目録』第三號、昭和3年8月20日発行

・『地平社書房古書販売目録』第四號、奥付なし

 

 

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 第一、二号は『民俗藝術』の表紙と似てるね

 

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 下の画像は第一號の最終ページに載っていた文。これによれば、『民俗藝術』発行以前は『月報』を発行していたが、昭和3年1月創刊の『民俗藝術』の発行等の事務作業が多くなったので、隔月で「地平社書房古書販売目録」を出すとの事。

 

 まあ実際には、隔月で発行できてないのでいろいろ大変だったんでしょうかね。第三號からは紙質も悪くなってますし......
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 目録掲載品を見ると、研究書から文学書、雑誌など堅い本がたくさん載っている。しっかりした古本屋のように思うね。

 

 Kamikawaさんのnoteも参考に......

 

note.com