はじめに
以前、『民俗藝術』の初期の版元である地平社社房の目録について、架蔵4点を紹介した。改めて、その書誌を説明すると、
・『地平社書房古書販売目録』第一號、昭和3年1月15日発行
・『地平社書房古書販売目録』第二號、昭和3年4月15日発行
・『地平社書房古書販売目録』第三號、昭和3年8月20日発行
・『地平社書房古書販売目録』第四號、奥付なし
となる。
今回は、近代書誌懇話会編の『日本古書目録大年表』(以下「年表」)を参考にして、前記事について補足を行う。
書誌: 近代書誌懇話会編『日本古書目録大年表』(金沢文圃閣、2015.1)
なお、これは大學図書館に購入申請を出して入れてもらった。未来の院友たちは有効に利用されたし。
目録からみる地平社書房の古書目録
年表には、地平社書房の古書目録は5点掲載されている。このうち、3点は前記事にて紹介した、1、3,4号である。一番ページ数の多かった2号は千代田図書館のコレクションには入っていないようだ。
さて、ほかの2点について説明する。いずれも、前記の目録の前年(昭和2年、1928)に発行されたようだ。
・『地平社書房古書販売月報』1号、昭和2年9月
・『地平社書房古書販売月報』2号、昭和2年10月
以上2点があったようだ。
ここで、『地平社書房古書販売目録』第一號の巻末を見てみると、「月報」から「目録」に変わった事情がわかるようになった。
実は本目録の原稿は去る十一月中に出来ていたのでございますが、製版所にある事故が生じましたため、こんなに遅れるやうになつたのでございます。
つまり、もともと昭和3年1月の「目録」1号は、前年の昭和2年、「月報」2号の翌月の11月に発行される予定であったということだ。しかし、製版所で事故ってしまい、発行が遅れ、その間に『民俗藝術』の発行等の業務が重なってしまい、毎月発行の月報として目録が発行できなくなってしまったということになる。
以上が、『地平社書房古書販売月報』から『地平社書房古書販売目録』への名称変更の要因となったようだ。
まとめ
年表から架蔵していない地平社書房の目録を調べると、前年に2冊発行していることがわかった。これにより、地平社書房の「古本屋」として動きが一部わかったんじゃなかろうかということです。
素人目線でも、古本屋と出版社の兼業がいかに大変なのかがわかった。
なにはともあれ、民俗学史に残る雑誌『民俗藝術』を創刊したことはすごいことです。