古書目録にあった面白そうな本Part1(仮)

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『精選古書綜合目録 東京書友会五十周年記念』 昭和37年11月

 2年位前に高円寺で200円くらいで買った記憶がある。

 古書目録は知らない本に出会えるだけじゃなくて、珍しい本にも出会える。そんな中で、一冊、面白そうな本を紹介。

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 『後狩詞記 署名本』というのが載っていた。

 『後狩詞記』は言わずと知れた柳田ダイセンセの本だ。左下に署名が見える。

 

 ここまでだったら署名本のひとつですけれども、それ以外にも画像には面白い情報がある。

 まず、左上に「田山家文庫」という字がみえる。柳田の本で「田山」といったら、上毛かるたの「誇る文豪 田山花袋」が思い浮かぶ。柳田と花袋の交友は大塚英二の『恋する民俗学者』で読んだ記憶が......

 ただ、この「田山家文庫」が本当に田山花袋と関係があるのかは知らないので、なんともいえんですわ。

 

 さてもう一つ、右下にはみんな大好き蔵書印がある。

 印文を見ると「大島氏図書」とある。蔵書印DBで調べますと、なんとこの蔵書印はあの大島雅太郎ものじゃあありませんか!?

dbrec.nijl.ac.jp

 大島雅太郎といえば、源氏物語の大島本がパッと思い浮かぶ大コレクターだ。Wikiをみると、戦後の公職追放で蔵書が散逸したらしく、その一部だろうね。

 

 柳田國男の署名本だけならたまに見かけるが、こういったように蔵書印とか書き込みがあると、世界に一冊だけの本になる。古本の面白いところよ。

風俗奇譚に折口信夫!?

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 一昨年の西部古書会館で購入。この時は性風俗関係のものはさして興味はなかったが、ふと気になってパラパラめくっていると、「釈迢空」の字が!?

 

 『風俗奇譚』1970年12月号に、兵児太という人による記事「少年愛の系譜⑤釋迢空と倭をぐな(上)」という記事があった。

 

 記事の内容は折口と作品の説明で、この号では「海やまのあいだ」と「口ぶえ」についてだった。特に「口ぶえ」については、それなりの分量を転載していた。まあ「少年愛の系譜」というんだから当たり前でしょう。記事の内容について特筆すべきことはなかった。

 この記事の3年前の1967年には加藤守雄が『わが師折口信夫』(文芸春秋)で、折口との体験をまとめた本が出ている。『迢空・折口信夫事典』(勉誠出版、2000)には、「大きな反響を呼んだ」とあるので、その流れのように思う。しっかし加藤著に載ってる、柳田が加藤に「加藤君、牝鶏になっちゃいけませんよ」は、はじめて読んだときは衝撃でしたわ。

 しかしまあ、折口についての記事がSM雑誌に載っているとはねぇ......まあ面白い発見でした。

 そういえば、大学の後輩に折口の同性愛について話したら、知らなかったらしく驚いていた。まあ、うちの大学じゃあ、そーゆうことは教えんか。というか、その話になったことなかった気がするね。

 

 なお、ざっさくプラスでこの号を検索すると、ほかの少年愛の系譜にはそれぞれ見出しがついているが、折口のにはついていない。

『山岳語彙採集帖』というもの

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 いつだかの西部古書会館で購入。民俗学系の棚にささっていた。

 

日本山岳会編『山岳語彙採集帖』(日本山岳会、1936)

 

 書き込み無し。書き込みあったらよかったね。

 1頁の「御願ひ」には、

 

本採集帖の作成に當つては、特に會員、高橋文太郎氏、磯貝勇氏より多大なる御助言と御助力を得た事を書添へておきます。 

 

とある。昭和11年前後の高橋文太郎、磯貝勇は、『旅と傳説』や『民俗学』等の民俗学雑誌にそれなりに記事を書いている。高橋文太郎は昭和13年に『山の人達』(龍星閣)を出版している。また、磯貝勇は、後に岩崎美術社の民俗民芸双書から『日本の民具』を出版している。納得の人選。

 ふと思ったが、戦前の民俗研究者たちは、民俗系以外にはどのようなグループに所属していたんだろうか。高橋、磯貝は上記から日本山岳会に入っていることがわかる。ほかの人たちの動向なんかも気になるところ。郷土玩具系なんかは容易に想像できるところ。